術後補助療法について
抗がん剤治療

乳がんは進行すると周囲のリンパ節に移転し、さらに血液の流れにのって肺、肝臓、骨などに遠隔転移を起こします。乳がんが完全に局所にとどまっている場合には手術や手術と放射線併用による局所治療だけで治癒します。しかし、局所治療の範囲以外にわずかでも転移が存在すると(これを微小転移といいます)、後に再発転移を起こし、治癒が困難となります。抗がん剤はがん細胞が増殖する過程に直接影響を及ぼし、がん細胞を縮小または死滅させます。一方、抗がん剤は正常細胞にも影響を与え、吐き気、脱毛、白血球減少などの副作用を起こしますが、副作用が許容される範囲にとどまり、抗がん剤が効果を示す場合には有用な治療手段となります。作用の仕方が異なる抗がん剤を同時または順番に使用することによってさらに効果を発揮します。抗がん剤、ホルモン剤などの薬物療法は全身に浸透しますので、全身的な微小転移に対しても効果が期待できます。乳がんの状況に応じて抗がん剤は術前抗がん剤治療、術後抗がん剤治療、転移・再発後抗がん剤治療の3つの場合に用いられます。

下記の場合、再発の危険な要素と考え、術後抗がん剤治療をお勧めします。

1. 腋窩リンパ節に転移があった場合
2. 腋窩リンパ節に転移はないが、以下のいずれかの状態であった場合
エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体がともに陰性である
病理検査で乳がんの大きさが2cmを超える
病理検査で乳がん細胞あるいは核の異型度(悪性度)が強い

年齢が35歳未満である
がん周囲の派管浸潤(血管やリンパ管へがんが広がること)がある
HER2陽性の場合